展示会や商品発表会、または日頃の会議で大きく映し出されるプレゼンスライド。投影されたスライドを前にした際、聞き手には、スライドの文字を「読む」というよりスライド全体を「見る」という意識が働いています。つまり「読ませる」のではなく「見せる」スライドであることが、プレゼン成功のコツ。「見てわかる」スライドを作成することが重要です。文字数についても注意して作成することで、同じ内容でも、各段に分かりやすいスライドにすることが可能です。文字数設定の3つのコツを押さえて、「見てわかる」スライドを目指してみてください。
「見てわかる」文字数のヒントはニュース番組で
朝晩のニュース番組、日中や週末夜のワイドショーなど、テレビの番組欄にあるたくさんの情報番組。実は、これらがスライド作成のヒントになります。情報番組もスライドも「読む」ではなく「見る」コンテンツなのです。情報番組では、画面の左上や右上に今取り上げている内容の要約テロップが出ています。これは、人間の視線の動き「Zの法則」に沿って配置されています。なお、この法則について詳しく知りたい方はこちらの記事で詳しく解説していますのでよろしければ参考にしてみてください。
参考記事「プレゼンスライドデザインの3つのコツ!ポイントを押さえて「伝わる」資料に」
コメンテーターが話している間やVTRが流れている間も、現在どのような話題が展開されているのか、話のポイントがパッと見て分かるようになっています。「目で見たほうが読むより早い」という速読の考え方に近いかもしれません。動画やテレビの世界で使われるこうしたテロップは、10~12字×1~2行の文字数が基本です。見て理解できる文字数の範囲と覚えておくと良いでしょう。たまに、この範囲をオーバーする文字数のテロップを見かけることもありますが、強調したい部分の色を変えてあったり、線で囲んであったりと、やはり「見てわかる」工夫が施されています。
同様のことがwebでも言えます。ポータルサイトのトップページに掲載されているニュース一覧のタイトルはだいたい14~20字ぐらいに揃えられています。パッと見て内容の概要が分かり、もっと詳しく知りたい、と思ってもらうための表現になっています。
また、映画の字幕は「1秒間に4文字」が目安。一枚の字幕は16字×2行までと言われています。「見る」と「読む」の中間ぐらいの文字数でしょうか。すなわち字幕は、文字数を優先しつつ、内容が伝わりやすいよう、直訳ではなく意訳したもの。適当な文字数、映画に合ったフォントの種類や大きさによって、映画館の後ろの席からでも見て分かるようにコントロールされているのです。
1|パワポスライドの文字数目安
プレゼンスライドでもこれらの手法を使えば、伝えたいことを「見て」理解してもらうことができます。メインメッセージは、伝えたいことを端的に12~20字×2行程度にまとめ、フォントの大きさは、会場の広さや聞き手の層に合わせて調整すると良いでしょう。
プレゼンスライドはスピーチの補足なので、聞き手は細かいテキストを読みません。中には、メモを取ろうと、映し出された文章を目で追ってくださる方もいますが、スピーチを聞きながらスピーチの内容以上の文字量を理解するのは容易ではありません。結局何が大事か頭に残らないプレゼンになってしまうと、発表する側も聞く側も時間の無駄になってしまいますので、適切な文字数での作成をオススメします。
2|そもそも文字数のカウント方法は?
文書作成ソフトのWordは、左下に総文字数が表示されますが、残念ながらパワーポイントにはそのような機能がありません。パワポスライドの文字数をカウントしたい場合、テキストボックスの文字をコピーしてWordに貼り付ければカウントできますが、テキストボックスを一つひとつコピー&ペーストするのは非常に手間がかかります。インターネット上には、様々なソフトの文字カウントが可能なアプリケーションなどもありますが、使用方法の確認やインストールに抵抗感がある方もいると思います。
ここでは、皆さんが試しやすい方法をお伝えします。
- 1. 文字数をカウントしたいパワポファイルをPDF変換する
- 2. PDFファイルを開き、カウントしたいテキスト部分をコピーする
- 3. Wordに貼り付けてカウントする
3|パワポスライドに使える、文字数を減らすコツ
スライドのテキストを「見てわかる」文字数にすることの重要性、また具体的なカウント方法も分かったと思います。では、限られた文字数の中で見て理解できるテキストにするにはどうしたら良いでしょうか。ポータルサイトのニュースタイトルを例に、考えてみましょう。
- 例文)雪で運休や遅れ 帰宅の足直撃 (13字)
たった13文字ですが、「雪の影響で電車などの交通手段に運休や遅れが生じ、帰宅に困っている人々がいる」ということが分かります。この「」内の文章は37文字なので、例文だと同じ内容を1/3ほどの文字数で伝えられていることになります。文字数を減らすコツはいくつかありますが、ここではシンプルなものを3つご紹介します。
①状況をイメージできるキーワードを使用する
⇒雪、運休、遅、帰宅
この4つのワードだけでも、なんとなく状況を想像できます。
②根幹になる単語を修飾語でつなぐ
⇒「雪で遅れ」だけでも最低限分かりますが、「運休や」「帰宅の足」「直撃」といった修飾語をつないで情報を広げています。
③ですます調にしない
⇒「雪で運休や遅れが出て、帰宅の足を直撃しています」…“です”“ます”を使うとどうしても文章が長くなります。適切なキーワードを用いて、見てわかる資料に
スライド作成に重要なポイントを考える際、「文字数」については見落とされがちですが、「見てわかる」スライドには必要不可欠な視点です。テレビ番組やネットのニュースなど、身近なところからヒントを得て日頃のスライド作成に活かしてみてはいかがでしょうか。コピーライターなどの文章の専門家でなくても、上の3つを踏まえれば「見てわかる」スライドのコピーを書くことが可能です。特別な言い回しや表現力は不要。端的に分かりやすく伝えることが優先されるこのテクニックは、スライドだけでなくレポートや資料の作成にも活かせるものです。ぜひ、今日から試してみてください。