プレゼンテーションは、多かれ少なかれ誰しもが緊張するものです。
緊張のあまり頭が真っ白になってしまった、言葉に詰まってうまく話せなかったという経験のある方や、苦手意識を持っている方もいらっしゃるでしょう。
こういった失敗の経験や意識があると次のプレゼンテーションの機会にも影響してしまい、緊張の無限ループになってしまいます。プレゼンテーションを緊張することなく成功させるには、この悪循環を断ち切る必要があります。
この記事では、緊張することなくプレゼンテーションを成功させるコツや、緊張してしまったときの対処法などを解説します。
プレゼンで緊張するのは当たり前!
営業や提案などのビジネスシーンではもちろん、学生でも研究やディスカッション内容の発表等で行われるプレゼンテーション。最近では新卒採用フローの中にプレゼン発表がある企業も増加傾向にあります。
行う機会の多いプレゼンテーションですが、緊張してしまいうまく話せない自分を責めてしまう人も多いのではないでしょうか。 しかし、多くの人の目が集まるプレゼンテーションで緊張してしまうのは当たり前のことであり、極めて正常なことです。 緊張を「なくす」のではなく、うまくコントロールして「活かす」ようにすれば、落ち着いてプレゼンテーションを進めることが可能です。
プレゼンテーションで緊張してしまう方に共通する理由として「完璧なプレゼンを求めすぎる」というものが挙げられます。完璧を求めるあまり過剰に構えてしまい、大きな緊張につながってしまうのです。リラックスして自分の考えを相手に伝えるためにも、必ずしも100%を目指すのではなく、「絶対に伝えたい重要な部分」に注力してプレゼンを行うことも大切です。
1|緊張するのはなぜ?主な原因
なぜ多くの人がプレゼンテーションで緊張してしまうのでしょうか。緊張を対処するにはまずその原因を知ることが大切です。ここではプレゼンテーションに対する緊張の主な原因を3つご紹介します。
充分な準備ができていない
プレゼンテーションを行うにあたって、事前にどれくらい準備をしていますか?準備が不足している場合、それが緊張の原因になってしまうことがあります。プレゼンテーションは話し手である自分に聞き手の視線を集めることになります。そのため、何かおかしなところはないかという気持ちから不安が生まれ、それが大きくなって強い緊張へとつながってしまうのです。
プレゼンテーションには事前準備をしっかりと行って臨むようにしましょう。しかし、資料も話も完璧に、ということではなく、自分が納得できるように準備をすることが大切です。充分な準備をしてきたという自覚が自信となることで、心に余裕を持つことができ、緊張を軽減してくれます。
失敗を恐れすぎている
完璧なプレゼンテーションをしようとするあまり失敗を過度に恐れていることも緊張してしまう原因の1つです。プレゼンテーションは対面、オンライン問わず聞き手の反応が見えることもあり、失敗して恥ずかしい思いをしたくないと考えてしまいがちです。しかしプレゼンの目的は完璧なプレゼンテーションをすることではなく、伝えたい情報を聞き手に伝えることです。
良いプレゼンテーションのイメージとして政治家の演説や世界で活躍する大企業のトップスピーチのようなものを想像する方もいるでしょう。トークスキルを活かしすらすらと話をする姿は確かに理想のプレゼンテーション像かもしれません。しかしすらすらと話せなければ失敗というのは誤りです。プレゼンテーションの聞き手は耳障りの良い話ではなく、プレゼンテーションの内容を聞くためにいるのです。よって、たとえところどころ言葉に詰まってしまったとしてもそれは失敗ではありません。落ち着いて要点を意識しながら話をすれば、聞き手にも伝わるはずです。
それでも失敗したと感じることもあるかもしれません。そんな時は反省を次回以降に活かしてプレゼンスキルを向上させられるチャンスだと前向きに考えてしまいましょう。
雰囲気にのまれている
プレゼンテーションを行う場は確かに独特の大きな緊張感に包まれていることが多いです。往訪先や会場はもちろんのこと、いつもの会議室や教室といった知っているはずの場所でも、まるで別の場所のように錯覚したり、息苦しさを感じることもあるでしょう。
しかしどんな雰囲気・場所でもやることはただ一つ、準備してきたプレゼンテーションを行うことです。「本番も練習と同じ」だと思うことは難しいかもしれませんが、そのマインドを持つことは大切です。
また極度の緊張は悪い影響を及ぼしますが、程良い緊張感はむしろ良い効果をもたらすこともあります。運動や勉強でも、練習より本番のほうが高いパフォーマンスを行うことができたという経験はないでしょうか。緊張は毒にも薬にもなります。次にご紹介する「緊張しないコツ」を実践して緊張をほどよくやわらげ、むしろ場の雰囲気と緊張感を味方につける気持ちで挑んでみてはいかがでしょうか。
2|プレゼンテーションで緊張しない方法4選~準備~
「プレゼンテーションで緊張しない方法」と聞くと、本番中に行うものを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は準備段階でできることもあります。少しでも緊張を軽減させるためのちょっとしたプレゼン準備のコツを4つ、紹介します。
①これだけは言う!というワードを用意しておく
プレゼンテーションの前に「これだけは絶対に伝えたい」というワード・フレーズを用意しておきましょう。
緊張で何も言えなくなってしまった時、その場をどうにか切り抜けようと焦ってしまい、組み立てた構成を思い出せなくなってしまいます。
これを防ぐために、予め絶対に言うべき大事なワードをパワーポイント資料などに盛り込んでおくことをオススメします。
例えば、「前年に比べ、売上が30%アップした」など、一番伝えたいフレーズをメモや資料に残しておくと、それをもとに話を始めやすくなります。
様々なことを伝えたいという気持ちがあるかもしれませんが、聞き手は情報が少ない方が分かりやすいと感じるものです。そのためにもスライドごとや章ごとに必ず伝えるポイントを一言で表しておきましょう。
②録画をして確認する
自分がプレゼンしている様子を録画して、客観的に見てみることは緊張を回避するためにとても良い方法です。
「プレゼンをしている自分の姿っておかしくないかな?」と少しでも思ってしまうことが、緊張の大きな原因になるといわれています。自分がプレゼンしている姿を客観的に見ると、思っていたより自然に振る舞えていることもあります。それが自信につながり、プレゼンテーションのときの緊張を緩和できるようになります。
もし録画して自分の姿を見たときに、次の見出しで紹介するような「クセ」が出ているようなら、緊張を少なくするために行動できるチャンスです。
③緊張した時に出やすいクセを把握しておく
プレゼンテーションの聞き手は、話し手の緊張に敏感で、ちょっとした動作から「あ、この人は緊張しているな」と気がつきます。 そして聞き手の表情や雰囲気から緊張が伝わっていることに気づいてしまうと、そこから負のスパイラルに陥ってしまい、緊張はさらに加速してしまうでしょう。負のスパイラルに陥らないためには「緊張すると出やすいクセ」を把握して、その仕草が出ないように心がけることが大切です。
例えば、先ほど紹介した「自分のプレゼンテーションを録画して確認」したときに、こういった仕草はしていませんか?もし無意識でやってしまっているのであれば、できるだけ意識してこのような仕草をしないように心がけましょう。堂々としているように見える自分を演じることが大切です。無駄に動く必要はなく、どっしりと構えていれば余計な緊張を回避できます。
仕草をうまくコントロールして、自分のクセを出さなければ、聞き手にこちらが緊張していることが伝わることはありません。そうすれば、心の中でどんなに緊張していたとしても全く気にすることはないでしょう。
④原稿を丸暗記するのではなく、スライドを見て話せるようにする
緊張を減らすためにはたくさん練習をして原稿を丸暗記してしまえば良い、と考えている方はいませんか?
しかしその考え方は間違っています。原稿を丸暗記してしまうと、一つの箇所で引っかかってしまった時にその先が全て真っ白になってしまうリスクがあるからです。
そうならないためには、プレゼン内容を一語一句丸暗記しようとするのではなく、話の要点を押さえることが重要になります。そうすれば、もし緊張して途中で止まったとしても、スライドを確認しながらその先をリカバリーすることができるでしょう。
3|プレゼンテーションで緊張しない方法4選~本番中~
緊張を少しでも減らすための準備時のコツを見てきましたが、それでも緊張を全くなくすことはできません。そこで、本番中に緊張してしまったときに、少しでも緊張を和らげる方法について4つ解説していきます。
①視線をコントロールする
プレゼンテーション中は視線をコントロールするようにしましょう。視線が泳いでいると緊張していることが聞き手に伝わってしまったり、落ち着かずにソワソワしたりしてしまいます。
もし聞き手の目を見るのが怖いのであれば、会場の隅を見るなどのテクニックが有効です。
スライドや資料などに集中するのではなく、部屋をぐるっと見渡すように心がけると落ち着くことができます。
②あえて緊張していることをカミングアウトする
プレゼンで本題に入る前に「ちょっと緊張していますが」とカミングアウトしてしまうのは意外と効果的です。
「緊張している事実を自分から言うなんて……」と思うかもしれませんが、この一言を言うだけで、思っている以上にリラックスして話せるようになります。
③うまくやろうとせず、ありのままの自分で挑む
緊張しすぎてしまう大きな理由に「自分の実力以上に上手くやろうと思ってしまうこと」があります。
しかしプレゼンで大切なのは、うまく話すことよりも自分が伝えたいと思っていることを正確に伝えることです。人は実力以上の力を発揮することはできません。うまくやろうと力まずに、ありのままの自分で挑むようにしましょう。開き直ってしまえば、かえってスムーズにプレゼンすることができます。
④パワーポイントの発表者ツールを活用する
発表者ツールをご存じですか?パワーポイントには聞き手に通常のスライドショーを展開しながら、手元でPCを操作するプレゼンターにはノートと次のスライドのプレビュー、そしてスライドショーの経過時間を表示することができる機能があります。
ノートに話の要点を記入しておけば確実に伝えたいことを押さえて話をすることができますし、スライドプレビューを確認することで次に何を話すか把握でき、スライドを進めるタイミングに迷うこともなくなります。また経過時間も確認できるため、時間配分もしやすくなります。使い方は簡単なので緊張をやわらげるためにぜひ活用してみてください。
4|緊張が起こしたプレゼンテーション時の失敗談&対策方法
最後に、プレゼンテーションのときに緊張しすぎてしまったがために起こりがちな失敗談とその対策についても確認していきます。
声が震える、早口になる……
「早いうちからプレゼン資料を作り、しっかりと対策してきたつもりでしたが、いざ人前に立つと声が震えてしまい、汗もどんどんかいてしまって……結局プレゼン後、上司には「早口過ぎてあまり聞き取れなかったよ」とのフィードバックをもらってがっかりしてしまいました。」
(30代 男性)
プレゼンテーション時に声が震えてしまう、早口になってしまうというのはよく聞く失敗談です。
不安で声が震えてしまうのは、緊張のせいもありますが、声を出す準備ができていなかった場合に多いです。対策として、本番前に誰かと会話や電話をして予め声を出しておくと震えは軽減されるでしょう。同時に緊張をほぐすこともできますのでオススメです。
早口になってしまうのも、「早く終わらせたい!」という気持ちが出てしまっている証拠です。いつもよりもゆっくり話すことを心がけ、早口になっているな、と気づいたら一呼吸おいてみましょう。
数秒話が止まったとしても、聞いている側はあまり気になりません。むしろ早口で喋り続けてしまう方が聞く方も疲れてしまいます。ペースが早くなってしまっていると感じたら、無理に続けず一旦話を止めて、視線を巡らせてみるのも手です。
しっかり作ったパワポが、投影したら見えなかった……
「しっかりと練習もして、かなりの力作のパワポ資料でプレゼンテーションに臨みました。しかし、実際にプロジェクターに映してみると色がかなり薄く、なかなか見えないことが発覚。急いで作り直したのですが、焦ってしまったため、ミスの多いプレゼンテーションになってしまいました。」
(20代 男性)
スクリーンの色や会場の照明によっても映り方は変わってしまうことがあるため、注意が必要です。同じ資料でもパソコンのモニターとスクリーンで投影した場合とで、色味が全く違って見えてしまう可能性があります。
予め会場で確認ができる場合はスクリーンに投影して見え方をチェックしておくことが重要です。また、スクリーンに投影することが決まっている場合は、スライドの背景を濃い色に設定して資料を作るようにすると、こういった失敗も回避できます。
資料作成に時間がかかり、話す練習ができなかった……
「見やすくて綺麗なスライドを作ろうと思うあまり、スライド作成に時間がかかりすぎて肝心のプレゼンテーションを練習する時間がありませんでした。結果、もうほとんどぶっつけ本番状態に。伝えたいことの半分も伝え切れずにプレゼンテーションを終えてしまいました。」
(20代 女性)
こんな失敗もプレゼンテーションでよくあることです。練習時間をしっかりと確保するためには、資料作りのコツを把握してスピーディに作成できるようになることが大切です。
急遽プレゼン担当を任されたものの、ほかに仕事もあって準備時間があまり取れないこともあるかもしれません。そのような時も試行錯誤するのではなく、コツを押さえてササっと資料を作成することができれば、タイトな準備スケジュールの中でも練習時間をとりやすくなります。
プレゼン資料を作るコツはこちら 「伝わるプレゼンスライドデザインのコツ5選」
緊張を味方にしてプレゼンテーションを成功に導こう
大勢の人に向けて堂々と話すことが得意という方は少数派なはずです。
プレゼンテーションで緊張するのは当たり前、と認め、今回ご紹介した緊張を克服するためのコツを実践してみてください。
聞き手は敵ではなく、恐れることはありません。自分が聞き手に回った時に壇上のプレゼンターを真っ先に敵だと思うことがないように、聞き手も「この人はどんな話をするのかな」「緊張しているのかな」とむしろあなたに興味をもって、精神的にも寄り添ってくれるはずです。
余裕を持ってスライドを作成し、しっかりと練習と準備をしておき、緊張を味方につけてプレゼンを成功させましょう。